生物のオペレーティングシステムであるゲノムとコンピュータプログロラムの決定的な違いは前者がダイナミックに変化し、自発的に進化し続けていることです。ゲノムの変化は人間の時間感覚では知覚できないほど遅々としていますが、万年・億年のスケールでは歴然としています。「万物は流転する」、「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」を引用するまでもないかもしれませんが、ゲノムは変化し続けるという視点は生物の一員である人間の病気を理解するために重要であるに違いありません。

じつは体の一部ではもっと速い進化も起きています。一つは抗体の遺伝子であり、もう一つが「がん」です。「がん」は驚くべきスピードでゲノムを変化させ、数々の障壁を乗り越えた結果、増殖し続けることができる憎き細胞集団ですが、ある意味で進化ゲームの勝利者であると言えます。彼らの進化戦略を封じることが「進化病:がん」の克服に役立つと考えています。そのためにはどのようにしてゲノムが変化するのかを知らねばなりません。

研究テーマ:
1. 突然変異誘導因子AIDによる発がんのメカニズム

抗体遺伝子の研究から見つかった AID (activation-induced cytidine deaminase) というタンパクはゲノムに突然変異を引き起こす活性のある大変ユニークな酵素です。このAIDが細胞のがん化の初期過程に関わっていることを示唆する結果が出始めています。AIDによるがん化が証明されれば、がんの予防も夢ではありません。(もっと詳しく)(解説パネル)(日本語総説

2. AID 遺伝子多型と疾患の関連

AID は抗体の多様性に必要な酵素ですから、その遺伝子多型は花粉症などのアレルギー疾患を含む免疫疾患と関連する可能性があります。また、発がんとの関連も考えられます。蓄積しつつあるゲノムデータと疾患情報の解析から、これらの疾患の予防と治療を目指しています。(もっと詳しく

3. 研究サポート

静岡県内の病院からの遺伝子関連分析依頼を積極的に引き受けます。お気軽にお問い合わせください。(もっと詳しく

アクセス:

研究室は静岡社会健康医学大学院大学 研究棟4階 研究実験室2にあります。

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