AID多型

最近の研究(*1)によると、がんの原因となる遺伝子変異の3分の1は体の外に原因があり、3分の2は細胞の中の原因に由来するとされます。この論文で著者たちは、化学物質や紫外線・放射線などの外的な要因を避けるだけではがんを予防できないと主張しています。私はこの意見には反対で、細胞内に原因があるもののうち、対策可能なものがあると考えています。内的要因にはDNA複製エラーと AID / APOBEC 遺伝子編集酵素群による DNA 塩基修飾が含まれます。前者に対する対策は困難ですが、後者は押さえ込むことが出来ます。本研究では AID / APOBEC 遺伝子多型(遺伝子の微妙な個人差)と発がんとの関連を明らかにして、AID がヒトの発がんに関係している可能性を示したいと思います。その先には AID の作用を阻害することによる、がんの予防を展望しています。

AID は抗体の遺伝子を変化させる酵素ですから、抗体の関わる病気、具体的には花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患やその他の自己免疫疾患にも関与している可能性があります。これら免疫疾患と AID の遺伝子多型の関係を明らかにし、免疫疾患の予防につなげます。

*1 C. Tomasetti, L. Li, B. Vogelstein, Stem cell divisions, somatic mutations, cancer etiology, and cancer prevention. Science 355, 1330-1334 (2017). [PubMed]